歯の神経を「抜かずに守る」！ 大きな虫歯を治す治療【直接覆髄法】

歯科医師の田中です。

「歯医者さんで、『虫歯が神経にかなり近い』と言われた…」 「もう神経を抜かないといけないのかな…」

そう診断され、不安になっている方もいらっしゃるかもしれません。

通常、虫歯が歯の神経（歯髄）まで到達すると、やむを得ず神経を取り除く「根管治療」が必要になります。しかし、この根管治療は、時間や費用がかかるだけでなく、何よりも大切なご自身の歯の寿命を縮めてしまうことにもつながります。

当院では、「できる限り、ご自身の歯の神経を残すこと」を最優先に考えています。そのために行う治療法「直接覆髄法（ちょくせつふくずいほう）」について今回は説明していきます。

１．歯の神経を守ることは「歯の寿命」を守ること

なぜ、私たちはこんなにも歯の神経（歯髄）を残すことにこだわるのでしょうか？ それは、歯の神経があなたの歯の健康を保つ「心臓部」であり、歯を長持ちさせるための土台だからです。

歯の神経が持つ重要な役割

歯に栄養を届ける大切なパイプ 神経の管の中には、血管やリンパ管が通っており、これにより歯に栄養を送り届けています。

神経を抜いてしまうと、この供給が途絶え、例えるなら「枯れ木」のようになってしまいます。

神経を抜いた歯は割れやすく、欠けやすい状態になってしまいます。特に歯の根っこが割れてしまうと、修復は極めて困難となり、最終的に抜歯に至る可能性が非常に高くなります。

歯の神経はどのような見た目なのか想像できないと思います。下の写真のように、神経が生きている場合は出血があります。このような場合に直接覆髄を選択できる可能性があります。

２．神経を抜くのを避ける！「直接覆髄法」とは？

「直接覆髄法」は、深い虫歯の治療中に、わずかに歯の神経が露出してしまった（穴が開いてしまった）場合に、神経を抜かずに、その穴を特殊な材料で塞いで保護する治療法です。

この治療の目的と画期的な仕組み

目的はたった一つ。「あなたの歯の神経を、そのまま使い続けられるように守ること」です。

私たちは、露出した神経の上に薬剤を塗布します。この薬剤に外部刺激の遮断と保護、第三象牙質（修復象牙質）という固い組織の誘導・形成する能力があります。これによって神経を抜かずに治療できる可能性があります。

下記の写真のように、神経の部分を蓋をするように薬剤を塗布します。

治療の対象となる条件

直接覆髄法は、どんなに深い虫歯でも適用できるわけではありません。成功の鍵は、神経の炎症の状態にあります。

・虫歯が深く、削っている途中で神経と交通してしまった場合

・神経に非常に近いが、ズキズキとした激しい痛みがない場合

・神経が感染しておらず、健全である可能性が高い場合

すでに夜中に激しくズキズキ痛むなど、神経の炎症が元に戻せないほどひどい状態（不可逆性歯髄炎）にある場合は、残念ながらこの方法の成功は困難となります。そのため、正しい診断と、できるだけ早い段階で治療に取り組むことが極めて大切になります。

３．治療後の経過とあなたの歯を守るために

治療後の経過と症状

治療後、数日から数週間は、冷たいものがしみたり、噛むと違和感があるといった症状が出ることがあります。これは、神経が修復作業を始め、新しいバリアを作ろうと頑張っているサインである場合が多いです。通常、これらの症状は時間とともに落ち着いていきます。

しかし、以下の症状が現れた場合は、すぐに当院にご連絡ください。

• 痛みがどんどん強くなる

• 何もしなくてもズキズキと激しく痛む（自発痛）

• 顔や歯茎が腫れてきた

これらの症状は、残念ながら治療が成功しなかった可能性を示しており、やむを得ず神経を抜く治療（根管治療）に移行せざるを得ません。

治療後の長期的な重要性

当院では、治療後も定期的にメインテナンスを行って、神経が壊死したり、根の先に膿が溜まっていないかなど経過を観察させていただきます。「神経を抜きたくない」というあなたの願いを叶えるため、当院は最新の知識と技術で、大切な歯を守るお手伝いをいたします。

もし、大きな虫歯でお悩みの方、このうような治療法にご興味のある方はぜひ一度当院にご相談ください。